許諾による通常実施権者とは?
特許権者が他人に対し、その特許発明についてライセンスをすることができます。特許発明とは、特許を受けている発明をいいます。そのライセンスに関する契約を特許権者と締結することで、特許権者から差止めとか損害賠償請求を受けないという地位が確保されている者を「許諾による通常実施権者」と呼んでいます(ライセンシーの承諾に関する法改正のページの図の右から第4列目)。
特許法の規定では、業としてその特許発明の実施をする権利を「通常実施権」といいます。 通常実施権を有する者を「通常実施権者」といいます。
通常実施権者は、特許発明を実施できますが、第三者による権利侵害に対して原則として自ら差止め請求や損害賠償請求をすることができない、といった特徴を有します。
通常実施権には、許諾による通常実施権だけではなく、法定通常実施権、裁定通常実施権が含まれます。
法定通常実施権は、職務発明に基づく通常実施権と、先使用による通常実施権とに分けることができます。
これら通常実施権を有する者のうち、今回の法改正では、許諾による通常実施権者と、職務発明に基づく通常実施権者が法改正の対象となっています(ライセンシーの承諾に関する法改正のページの図の右から第3列目と第4列目の赤字部分)。
ライセンスに関する契約の内容は、特許権者と他人が当事者となって決めることができます。
契約のなかには、特許権者がその特許の実施権をその他人以外に対して許諾しない条項(自己のみ許諾することを約束すること)を含むものもあります。この自己のみに許諾された通常実施権を「独占的通常実施権」と呼んでいます。
この独占的通常実施権は、法律に規定があるわけではなく、契約上与えられた地位です。独占的通常実施権者は、登録後の発明について独占的なライセンスを受けている者といえます。
独占的通常実施権を許諾された者(独占的通常実施権者)と、そうでない通常実施権者(非独占的通常実施権者)は、共に特許発明を実施できる「許諾による通常実施権者」という点で共通し、独占的通常実施権者には損害賠償請求が認められ得るという点で異なります。
また、複数の特許権等が対象とされているライセンス契約も実務上あります。これを「包括ライセンス契約」といいます。
さらに、特許の活用の方法として、特許権者同士が相互に実施権を許諾することもあります。これを「クロスライセンス」と呼んでいます。
こんにち、異業種の事業者の特許との間でも抵触関係を生ずる可能性が増したことを背景として、「包括的クロスライセンス」契約というライセンス方式が活用されているようです。 包括的クロスライセンスには、実用新案も含んでライセンスを許諾することが多くなっているようです。
実用新案権に係る通常実施権者がいる場合、実用新案登録に基づく特許出願をするとき、承諾という手間がかかってしまうという懸念があるようですが、今回の法改正の対象となっていません(ライセンシーの承諾に関する法改正のページの図の下から第1行目)。
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